社会的比較理論とは

社会的比較理論とは、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した説で、人は周りの人と自分を比較することで、自己評価をすることを言います。

人は社会生活を送るために他人と比較します

人は自分と他人を比較しながら生活しています。

自分の能力、年収、学歴、容姿などが優れているか劣っているか、自分の考えは正しいか間違っているか、そのとき取るべき言動は適切かどうか、幸せか不幸かまで、すべて他人と比較することで判断しています。

例えば、テストで70点を取った場合、この点数は高いのか低いのか?

また、自分の身長が高いのか低いのか?

他人と比較しなければ評価することができません。

社会生活を送るためには、他人と比較することで自分の置かれた状況や環境をよく知ることが必要です。

比較対象の選定方法

比較をする際は、自分とよく似た人や同じジャンルの人が比較対象になります。

事例1

自分の身長が高いか低いかは、自分と同世代でかつ同性と比較することで判断します。

言い換えると、小学生の男児が自分の身長が高いか低いかを判断するために大人や女児と比較とするのは適切ではないことは分かるでしょう。

事例2

自分が取ったテストの点数が高いか低いかは、同じテストで他人が何点取ったかで評価します。

異なる科目や科目が同じでも別の内容のテストとは比較しません。

事例3

例えば、スポーツができる人と勉強ができる人はどちらが優れているか?

同じスポーツでも、サッカー選手と野球選手ではどちらがより優れているか?

という比較はしません。

ジャンルが違うと正確な自己評価につながらないため比較対象にはなりません。

社会的比較理論には下方比較と上方比較があります

自分よりも劣っている人と比較することを下方比較、自分よりも優れている人と比較することを上方比較と言います。

下方比較の特徴

人はあることについて自信がないときや悩んでいるときは、下方比較をします。

「この人よりはまだ自分のほうがマシだ」と安心感を得るためです。

ただ、常に下方比較をしてばかりいると、ネガティブ思考になり、低いレベルにとどまることになりがちです。

上方比較の特徴

人はあることについて自信があるときや向上心があるときに、上方比較をします。

「あの人のようになりたい」と比較対象を成功モデルとして見ることで、やる気を高め努力を促します。

しかし、比較対象の人が雲の上の存在で到底追い付くことができない場合は、自信喪失につながる場合があるため注意が必要です。

ネット炎上も社会的比較理論で説明できます

「自分がこうだ」と思っても、それは独りよがりの考えかもしれません。

しかし、自分と同じ考えを持つ人を見つけたら安心するのではないでしょうか。

社会的比較理論には、多数の他者が自分と同じ意見であることが分かると、自分の意見に自信を持ち、その考えが一層強化されるという説があります。

ネット炎上が起きやすい理由も、社会的比較理論で説明することができます。

※ネット炎上とは、企業が不祥事を起こしたり、有名人が不適切な発言をしたりスキャンダルを起こしたことで、当人のSNSやブログのコメント欄に多数の批判が書き込まれることです。

ネットの世界では、自分と同じ意見の人を見つけやすいという性質があります。

ネットで自分と同じ考えの人を見つけることで、自分の考えに自信を持つことができます。

ネットの世界では、自分の考えに自信を持ちやすい環境だからネット炎上が起きるというわけです。

加えて、ネットの世界では誰が書き込んだのか分からないという匿名性が批判に拍車をかけます。

ネットの世界では批判が過激化しやすいんですね。