心理学とは何か?

心理学とは何か?

心理学とは、その名の通り人の心理を科学的に解明する学問です。

ただ、心理学は人や心に限定されるわけではなく、人以外に動物が含まれることもあります。

また、心の働きが現れた行動や体の反応、すなわちどのような心境のときにどのような行動をするのか、または身体はどのように反応するのかという仕組みも研究対象に入ります。

心理学を学ぶメリット

コミュニケーションスキルが向上する

心理学を学ぶことで相手の気持ちを理解できるようになります。言葉以外の行動や表情から、相手の気持ちを推し量ることできるようになります。コミュニケーションスキルが向上します。

良好な人間関係を築くことができたり、人間関係に関するトラブルが発生しても上手に解決することができます。

ストレスに強くなる

心理学を学ぶことで自分の気持ちもよく理解できるため、ストレスに対してうまく気持ちを切り替えることができます。

悩みがある人の相談に乗ることができる

悩みがある家族、友人、同僚から相談を受けても適切なアドバイスを行うこともできます。

あらゆるシーンで役に立つ

一般的な仕事であっても取引先、顧客、上司、部下とコミュニケーションを取る際に心理学の知識を活かすことができますし、人と関わる生活を送っている人であればあらゆるシーンで心理学は役に立ちます。

専門職を目指すことができる

心理カウンセラーなどの心理学を扱った専門的な職業を目指すことができます。

心理学を活かせる職業

心理学を活かす職業としてスクールカウンセラーや企業内カウンセラー、大学の研究職を挙げることができます。

しかし、そのような専門職でなくても心理学の知識を活かすことができます。心理学を学べば相手の心理を読み取ることで適切な対応をすることができるからです。

心理学は人と関わる仕事をしているすべて人にとって有用ですが、特に次の仕事に携わっている人にとっては役に立つでしょう。

メンタルトレーナー

メンタルトレーナーは、スポーツや仕事などの場面で相手の精神的な問題を解決したり、目標を達成するためにメンタル面からサポートする仕事です。

ビジネス

ビジネスは信頼関係で成り立っています。心理学を学ぶことで誠意が相手に伝わりやすくなるので、顧客の心をガッチリつかんで契約や販売につなげることができます。また、販売心理や群集心理を学ぶことで市場や顧客のニーズをつかむことができます。新商品の開発や広告の表現方法に活かすことができます。

教師、児童相談所の職員

心理学を学ぶことで、いじめなどで人間関係に悩んでいる子供や心に傷を負っている子供にいち早く気づくことができますし、その際、適切な対応を取ることができるようになります.

人事職

心理学を学ぶことで、特定の仕事に向いているか、協調性があるかなどを応募者の受け答えや態度などから見抜くことができます。

心理学は基礎心理学と応用心理学に分かれる

心理学は大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」に大別されます。

「〇〇心理学」と名前が付くものは驚くほどたくさんありますが、その多くは「基礎心理学」または「応用心理学」を細かく分類したものになります。

基礎心理学

基礎心理学は、すべての人間が等しく持っている心の仕組みを一般法則として、心理学的実験によって得られた研究成果に基づき理論的に研究・解明することを目指す学問です。

応用心理学

基礎心理学で得られた知見を踏まえて実生活・マーケティング・スポーツ・恋愛・犯罪などの特定の分野、場面で活用することを目的とした学問です。

スタンフォード監獄実験とは?人が役割に染まる心理

スタンフォード監獄実験とは?

スタンフォード監獄実験とは、1971年、アメリカ・スタンフォード大学で心理学者フィリップ・ジンバルドーが行なった実験です。

当時の心理学は「人間の行動はその人の気質や性格で決まる」と考えられてましたが、
ジンバルドーは「置かれた状況が人の行動に強く影響する」と考えました。

というのは、ジンバルドーはスラム街出身の心理学者で、小さいときから悪事に手を染める友人たちを目の当たりにしてきたからです。

そこで役割を与えられた人はどのように行動するのかを検証するために、ジンバルドーは、スタンフォード大学の地下に刑務所のような施設を作って、看守役と囚人役の行動を観察しました。

これがスタンフォード監獄実験になります。

スタンフォード監獄実験がスタートしました

初めに被験者は新聞広告などを利用して募集しました。

集められた被験者のうち、11人に看守役、10人に受刑者の役割を与えて、それぞれの役を演じてもらいます。

リアリティを出すために次のような演出がなされました。

警察の協力のもと、囚人役は本物のパトカーと警官により逮捕されます。

そして、目隠しをされてスタンフォード大学の地下の模擬刑務所へ連行。

囚人役は指紋を採取され、看守役たちの前で服を脱がされ全裸されます。

そのあと、シラミ駆除剤を散布されました。

そのあと着用するのは、胸と背中に番号が記された薄い布で作られたワンピース型の囚人服です。

下着の着用も禁止。

頭には女性用のナイロンストッキングから作った帽子を被せらます。

足には鉄製の鎖を付けられ、模擬刑務所に収容されました。

その後、囚人役は、

  • 名前ではなくID番号で呼ばれます。
  • 手紙、タバコ、トイレなどは許可制で認められます。
  • 面会は手続きにより認められます。

これらはすべて囚人役に屈辱感や無力感を与えるための演出です。 

一方の看守役はサングラスと制服を着用し、警笛と警棒を常備しています。

支配者であることを感じさせるような格好をします。

スタンフォード監獄実験の経過

次第に看守役は、自らルールを作り、囚人役に権力を行使するようになります。

例えば、

  • 点呼と称して午前2時半と午前6時に起こす。
  • 罰として腕立て伏せをさせる。
  • 夜間のトイレの使用を禁止し、バケツにするよう指示。
  • 反抗的な囚人役は独房に見立てた倉庫に監禁。

囚人役は、無抵抗に看守の言動を受け入れるようになっていきました。

実験は2週間で終わる予定でしたが、2人の被験者がストレス障害を発症し離脱。

最後は禁止されていた暴力行為が行われたことから、6日で打ち切りになりました。

スタンフォード監獄実験の結果

スタンフォード監獄実験が行われることで分かったことは、時間の経過とともに看守役は支配的に、囚人役は従属的に振る舞うようになったということです。

すなわち、看守役の被験者はより看守らしく、受刑者役の被験者はより受刑者らしい行動を取るようになったということ。

人は役割を与えられると、その役割を積極的に果たすようになることが明らかになりました。

スタンフォード監獄実験とミルグラム実験

スタンフォード監獄実験では人は役割を与えられるとその役割にふさわしい行動を取ることが明らかになりました。

一方のミルグラム実験では残酷なことでも権威に従うことが実験により明らかになりました。

スタンフォード監獄実験とミルグラム実験は似ています。

近年、「刑務所長役」であったジンバルドーから「看守役」へ積極的な指示・指導が為されていたとの指摘がなされ、信頼性が疑問視されています。

それが事実ならスタンフォード監獄実験とミルグラム実験は、ますます同じような実験と結果になっていると言えます。

社会的比較理論とは?人が他人と比較をする心理

社会的比較理論とは

社会的比較理論とは、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した説で、人は周りの人と自分を比較することで、自己評価をすることを言います。

人は社会生活を送るために他人と比較します

人は自分と他人を比較しながら生活しています。

自分の能力、年収、学歴、容姿などが優れているか劣っているか、自分の考えは正しいか間違っているか、そのとき取るべき言動は適切かどうか、幸せか不幸かまで、すべて他人と比較することで判断しています。

例えば、テストで70点を取った場合、この点数は高いのか低いのか?

また、自分の身長が高いのか低いのか?

他人と比較しなければ評価することができません。

社会生活を送るためには、他人と比較することで自分の置かれた状況や環境をよく知ることが必要です。

比較対象の選定方法

比較をする際は、自分とよく似た人や同じジャンルの人が比較対象になります。

事例1

自分の身長が高いか低いかは、自分と同世代でかつ同性と比較することで判断します。

言い換えると、小学生の男児が自分の身長が高いか低いかを判断するために大人や女児と比較とするのは適切ではないことは分かるでしょう。

事例2

自分が取ったテストの点数が高いか低いかは、同じテストで他人が何点取ったかで評価します。

異なる科目や科目が同じでも別の内容のテストとは比較しません。

事例3

例えば、スポーツができる人と勉強ができる人はどちらが優れているか?

同じスポーツでも、サッカー選手と野球選手ではどちらがより優れているか?

という比較はしません。

ジャンルが違うと正確な自己評価につながらないため比較対象にはなりません。

社会的比較理論には下方比較と上方比較があります

自分よりも劣っている人と比較することを下方比較、自分よりも優れている人と比較することを上方比較と言います。

下方比較の特徴

人はあることについて自信がないときや悩んでいるときは、下方比較をします。

「この人よりはまだ自分のほうがマシだ」と安心感を得るためです。

ただ、常に下方比較をしてばかりいると、ネガティブ思考になり、低いレベルにとどまることになりがちです。

上方比較の特徴

人はあることについて自信があるときや向上心があるときに、上方比較をします。

「あの人のようになりたい」と比較対象を成功モデルとして見ることで、やる気を高め努力を促します。

しかし、比較対象の人が雲の上の存在で到底追い付くことができない場合は、自信喪失につながる場合があるため注意が必要です。

ネット炎上も社会的比較理論で説明できます

「自分がこうだ」と思っても、それは独りよがりの考えかもしれません。

しかし、自分と同じ考えを持つ人を見つけたら安心するのではないでしょうか。

社会的比較理論には、多数の他者が自分と同じ意見であることが分かると、自分の意見に自信を持ち、その考えが一層強化されるという説があります。

ネット炎上が起きやすい理由も、社会的比較理論で説明することができます。

※ネット炎上とは、企業が不祥事を起こしたり、有名人が不適切な発言をしたりスキャンダルを起こしたことで、当人のSNSやブログのコメント欄に多数の批判が書き込まれることです。

ネットの世界では、自分と同じ意見の人を見つけやすいという性質があります。

ネットで自分と同じ考えの人を見つけることで、自分の考えに自信を持つことができます。

ネットの世界では、自分の考えに自信を持ちやすい環境だからネット炎上が起きるというわけです。

加えて、ネットの世界では誰が書き込んだのか分からないという匿名性が批判に拍車をかけます。

ネットの世界では批判が過激化しやすいんですね。

ミルグラム実験とは?残酷なことでも権威に従う心理

ミルグラム実験とは?

ミルグラム実験とは、アメリカ・イェール大学の心理学者のスタンリー・ミルグラムが1950年代~1960年代に行った実験で、教師役が生徒役に問題を出し、間違うたびにじょじょに強い電気ショックを与えていくというもの。

生徒役はサクラで実際には電流は流れませんが、苦しむ演技をします。 

ミルグラム実験は、人は残酷なことであってもどこまで権威者の命令に従うかを検証した実験です。

ミルグラム実験は別名『アイヒマン実験』

ミルグラム実験は別名『アイヒマン実験』と呼ばれています。

アイヒマンとは、ナチス政権下において、アウシュビッツ強制収容所へユダヤ人の移送を指揮していたアドルフ・アイヒマンのことです。

アイヒマン人類史上まれに見るユダヤ人の大量虐殺を行った人物なので「恐ろしい大悪人なのだろう」と思われていました。

しかし、裁判が始まると、アイヒマンは出世好きの官僚的な性格の小役人だったことが明らかにされたのです。

ミルグラムはなぜこんな人物に残虐な行為が指揮できたか疑問に思いました。

それをきっかけにして行われたのがミルグラム実験になります。

ミルグラム実験の詳細

ミルグラムは地元紙の広告欄を利用して被験者を募りました。

集められた被験者は教師役と生徒役に分かれますが、真の被験者は教師役のみで生徒役はサクラです。

教師役となった被験者は、まず45ボルトの電気ショックを自ら体験します。生徒役となった者がこれからどの程度の傷みを感じるのかを認識させておくためです。

教師役と生徒役はそれぞれ別々の部屋に通されます。

部屋にはマイクとスピーカーがあり、お互いの姿は見えませんが声は聞こえる状態です。

教師役は生徒役に問題を出題し、生徒役が問題を間違うたびに、 より強い電流を流すように後ろに控えている研究者から命令されます。

電気ショック発生装置についてですが、 左から順番にもっとも軽微な15ボルトから命の危険性もある450ボルトまで電流が流れるボタンが30つ付いています。 ボタンの下に 軽い電撃 中位の電撃 強い電撃 強烈な電撃 激烈な電撃 超激烈な電撃 危険:過激な電撃 と記載されています。

実際は生徒役のサクラには電流は流れておらず、「ギャー!」などの叫び声がスピーカーから聞こえるようになっています。

電圧が上がることに生徒役の悲鳴は大きくなります。

教師役は、隔てた部屋で生徒役が電気ショックを受けて苦しんでいると信じている状態になります。

しかし、研究者は続けるように命令します。

教師役が命令を拒否すると実験は終了になります。

ミルグラム実験を行った結果

40人の教師役のうち26人が命じられるまま最大450ボルトの電気ショックを与え続けました。

教師役は命令を拒否しても何か罰があるわけではありません。

それにも関わらず、約65%の被験者が権威者に最後まで服従し続けました。

集団凝集性とは?集団を維持、発展させるためには欠かせない要因

集団凝集性とは?

集団凝集性とは、集団と個人の結びつきの強さのこと。

集団のメンバーを集団に引き付ける「求心力」や「動機付け」などです。

集団凝集性が強ければ、メンバーの一体感が強いグループになります。

すなわちチームワークが優れ、集団の目標に対しては協力的、離脱者を防ぐことができます。

集団を維持、発展させるためには、集団凝集性を強化することが重要になります。

集団凝集性の種類

集団凝集性は次の2種類があります。

対人凝集性 対人凝集性とはメンバー同士が好意を抱いていることで、集団に留まらせる魅力。 課題達成的凝集性 課題達成的凝集性とは「ここにいれば自分の夢が実現できる」と感じることで集団に留まらせる魅力。

集団凝集性を高めるためには、対人凝集性と課題達成的凝集性の両方を満たす必要があります。

集団凝集性が高いと集団浅慮が発生する

集団凝集性の高い集団ほど「グループの結束を乱したくない」「メンバーから嫌われたくない」という心理が働きます。

すなわち集団凝集性の高い集団ほど同調圧力が働くため、集団で決めたことに対して多様な視点から批判、反対することができなくなります。

その結果、集団浅慮が発生しやすくなります。

集団浅慮とは、集団において決めることが個人で決めることよりも劣る現象です。

集団で決めたことを適切に判断することができないことが原因です。

集団浅慮が起きると致命的な判断ミスを起こすことにつながります。

事実、企業の不正会計やデータ改ざんなどが起きる原因は集団浅慮によるものです。

集団浅慮が起きる原因は、集団凝集性の高い場合のほか、集団が外部から孤立している、リーダーが権力を持ちすぎている場合に起きやすい。

集団浅慮を避けるためには、異なった意見や建設的な批判を受け入れて、じっくり検討するなどの配慮が必要です。

攻撃手がかり説とは?武器があると攻撃したくなる心理

攻撃手がかり説とは

攻撃手がかり説とは、レオナルド・バーコウィッツが提唱した理論で、怒りは攻撃への動機を作るだけで、攻撃手掛かりがあることで人は攻撃行動に動くというもの。

ここでいう攻撃手掛かりとは、例えば銃や刀などの凶器のことです。

「怒りが頂点に達していたときにたまたま武器を持っていたから攻撃した」という状況は理解できると思います。

すなわり武器を持っていると攻撃を誘発しやすいんですね。

日本では見られない光景ですが、海外ではたびたび怒りに任せて銃を撃つ事件が発生しています。

銃を撃った人は、銃を持っていたから発砲することができたのであって、もし銃を持っていなかったらどうしていたか。

怒りに任せて相手を殴っていたか?

そういう場合もあるかもしれませんが、何もしなかった可能性が高いことは想像できるでしょう。

攻撃手がかり説を検証するための実験

レオナルド・バーコウィッツは、攻撃手がかり説が正しいことを証明するためにある実験をしました。

実験内容は次のような手順で進められました。

まず、サクラによって被験者たちを意図的に怒らせます。

次に被験者たちがサクラに報復する機会が与えられます。

被験者たちはサクラに電気ショックを与えることができるのですが、その際に3つのグループに分けます。

Aグループ

  • 電気ショックのボタンのそばに銃がある。
  • その銃はサクラとは無関係であると説明された。


Bグループ

  • 電気ショックのボタンのそばに銃がある。
  • その銃はサクラが以前使用したものであると説明された。

Cグループ

  • 電気ショックのボタンのそばに銃がない。

この3つのグループがサクラに何回電気ショックを与えるか調べました。

結果は、Aグループがもっとも電気ショックを与える回数が多く、Cグループがもっとも少なくなりました。

つまり、銃が近くにあると攻撃的になり、またその銃にどういう意味付けがなされているかも攻撃行動に影響を与えることが明らかになりました。

敵意帰属バイアスとは?相手の言動に敵意があると感じやすい心理

敵意帰属バイアスとは

敵意帰属バイアスとは、相手の言動に敵意があると感じやすい心理傾向のことです。

例えば、何気ない会話をしているときに相手は悪意はないのに「悪口を言われた」、質問をしただけなのに「嫌味を言われた」と感じやすい人は敵意帰属バイアスが強い人です。

敵意帰属バイアスが強いと、実際にはない敵意を感じ取ってしまうんですね。

分かりやすい事例としては、チラっと見ただけなのに「何見てんだコラァ!」と怒り出すヤンキーは、敵意帰属バイアスが強く現れている例になります。

敵意帰属バイアスが強い人ほど「被害妄想が強い」「キレやすい」性格の人だと言えます。

敵意帰属バイアスの事例

人ゴミの中、人とぶつかったとき

敵意帰属バイアスの弱い人は「人が多いから仕方がない」と考えますが、敵意帰属バイアスが強い人は「わざとぶつかってきた」と考えます。

人前で怒られたとき

敵意帰属バイアスの弱い人は「自分のために叱ってくれた」と考えますが、敵意帰属バイアスが強い人は「人前で恥をかかされた」と考えます。

自分を見ながらヒソヒソ話をされたとき

敵意帰属バイアスの弱い人は何とも思わなくても、敵意帰属バイアスが強い人は「自分の悪口を言われている」と考えます。

敵意帰属バイアスの強い人ほど攻撃行動に出やすい

アメリカの心理学者ドッジは、殺人、暴行、強盗などの犯罪で逮捕された青年を調べたところ、一般的に見ると悪意のない行動でも敵意を感じやすいことが分かりました。

つまり、犯罪で逮捕された青年は敵意帰属バイアスが強い。

そして、敵意帰属バイアスが強い人は攻撃性が強く、犯罪を犯しやすいことが明らかになりました。

敵意帰属バイアスが強い人ほど、ささいなことでも攻撃行動に出やすいということですね。

敵意帰属バイアスが強くなる原因

子供のときにいじめられたり仲間外れにされたり、親から虐待を受けた経験があると、敵意帰属バイアスが強くなることが明らかになっています。

また、敵意帰属バイアスが強い人は自己肯定感が低い傾向があります。

つまり、本当は自分は弱いと思っている人ほど、自分を守るために攻撃的になります。

「弱い犬ほどよく吠える」ということわざがありますが、そういう状態です。

敵意帰属バイアスの対処法

自分が敵意帰属バイアスが強い場合

イラっと感じることがあったら「自分のとらえ方が間違っているのではないか?」「別の解釈があるのではないか?」と疑いましょう。

相手が敵意帰属バイアスが強い場合

敵意帰属バイアスが強い人を変えることは難しいので、距離を置くのがベストです。

ボボ人形実験とは?人は観察学習(モデリング)をすることを明らかにした実験

ボボ人形実験とは

ボボ人形実験とは、アメリカのスタンフォード大学の心理学者アルバート・バンデューラが行った実験で、大人が人形に乱暴している様子を子供に見せると、子供がマネをして攻撃的な行動を取ることが確認された実験です。

これまでの心理学では、人は自ら体験することによって学習すると考えられていましたが、アルバート・バンデューラが行ったボボ人形実験によって、他の人の行動を見て学習する「観察学習(モデリング)」が可能であることが証明されました。

ボボ人形実験の詳細

子供たちを2つのグループに分けます。

グループAの子供たちには大人が風船のように膨らませた「ボボ人形」を叩く、蹴る、罵声を浴びせる様子を見せます。

グループBの子供たちには何も見せません。

そのあと、子供たちをボボ人形が置いてあるおもちゃの部屋で遊ばせます。

すると、グループAの子供たちはボボ人形に対して攻撃行動を取ることが多かったのです。

ボボ人形実験によって、子供はモデルを見て観察学習(モデリング)することが証明されました。

なお、 この実験では女児よりも男児のほうが攻撃行動を取りやすいことが判明しています。

バンデューラのモデリング理論

バンデューラが提唱した観察学習(モデリング)には4つの過程があります。

注意過程

モデルを観察している過程です。

保持過程

観察したモデルを覚えている過程です。

運動再生過程

モデルのマネする過程です。

動機付け過程

モデルのマネを続けるかどうか動機付けを行う過程です

観察学習(モデリング)の例

  • 変身ポーズのマネをするヒーローごっこ。
  • 葬式ではみんな静かにしているので、自分も静かにする。
  • 犬を怖がっている子供に犬と遊んでいる様子を見せて慣れさせる。

ボボ人形実験の教訓

犯罪を行った少年によくありがちなこととして「その少年は普段から残酷なゲームや漫画を楽しんでいた。その影響受けたのではないか?」なんて報道されることがあります。

ボボ人形実験によってその考えは間違いではないことが分かりました。

子どもは親の背中を見て育ちます。

羽目を外すような親でも、子供の前では良識ある行動を見せたいものですね。

アッシュの同調実験とは?人が多数派に流される心理

同調とは?

この記事で解説している「同調」の意味は、

他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること。

同調(どうちょう)の意味 – goo国語辞書

になります。

同調して行動することを「同調行動」、同調するように圧力をかけることを「同調圧力」と言います。

人が同調する心理

「1+1」はいくつか?

答えは「2」です。

これは紛れもない事実です。

しかし、その場にいるみんなが「11」だと答えたらどう思いますか?

「きっとこの場では特殊なルールが定められているんだろう」と思って、自分も「11」と答えたくなるのではないでしょうか。

すなわち、自分以外の全員の意見が一致していると同調が起きやすくなります。

これが同調という心理です。

人はなぜ同調するのか?

「長いものには巻かれろ」ということわざがありますが、人は「みんなと一緒でありたい」と思う心理があります。

特に日本人は特にみんなと同じだと安心する気質を持っています。 

みんなと同じであることで仲間外れにされることを避けることができます。

だから人は何かを判断するとき、周りの人に同調する傾向があります。

あるときは他人の意見に影響を受けて、自分の意見を変えることもあります。

ときには明らかに誤りであっても多数派に従うことがあります。

これが同調の悪い面ですが、同調にはみんなが同じ価値観であること、同じ行動を取ることで、社会的集団の秩序を守ることができるというプラスの面もあります。

同調行動の例

  • ファッショなどの流行に乗る。
  • ランチで周りの人と同じものを選ぶ。
  • 会議などで全員一致の意見に反対できずに黙っていた。
  • 仕事が終わっても自分一人だけ早く帰ることができなかった。
  • サッカーをしたいけどみんなが家でゲームをやりたいと言ったからゲームをした。

同調には情報的影響と規範的影響がある

イギリスの社会学者ドイチとジェラードは、同調の原因として「情報的影響」と「規範的影響」の2つがあると考えています。

情報的影響

情報的影響とは、他者の判断を正しい情報だと考えて自分の考えに取り入れることです。

例えば、ある商品を購入する場合、ネット上の口コミを参考にして商品を選ぶことは、情報的影響の1つと言えます。

規範的影響

規範的影響とは「上司から嫌われたくない」とか「集団の輪を乱したくない」という心理から行う同調のことです。

例えば「本心では反対だけど、批判されることを恐れて多数派の従う」ことは、 規範的影響にあたります。

アッシュの同調実験の内容

この同調行動についてですが、アメリカの社会心理学者アッシュが1950年代に興味深い実験をしていたので紹介します。

その実験は、多数の人が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べるというもの。

アッシュの同調実験は次のようなものでした。

会議室に8人の被験者が集められましたが、この中の7人がサクラで真の被験者は1人だけです。

被験者の前に試験官が2つのカードを見せます。

被験者はカード1に描かれた線と同じ長さの線を、カード2に描かれた3本の線の中から選んでもらいます。

カード2に描かれた3本の線の長さはそれぞれ明確に異なっていて、普通は間違えようがない問題です。

最初に7人のサクラが順番に「A」という誤った回答をしたあとに真の被験者が答えます。

以上の手続きの実験をアッシュは12回行いました。

アッシュの同調実験の結果

7人のサクラが全員誤った回答した場合、被験者が同調して誤答した割合は32%になりました。

アッシュは、被験者を1人にして、同じ問題を出しました。

その実験では99%以上の人が正解でした。

1人のときは間違えない問題でも、 全員が誤った回答を選ぶと、被験者も流されることが明らかとなりました。

アッシュの同調実験で誤答をした人と一度も間違えなかった人の言い分

アッシュの同調実験で誤った回答をした被験者は次のように言っています。

「最初に回答した人は目が悪かったのだろう。みんなは最初に回答した人に配慮して誤った回答をしたのだろう。私もその場に合わせなければいけないと思いました。」

ここから同調圧力に屈しやすい人には、以下の特徴があることが分かります。

  • 勝手に思い込んで勝手に解釈をしがち
  • 空気を読む能力が高い、人一倍気を使っている

その一方で、アッシュの同調実験では25%の人は一度も間違えませんでした。

一度も間違えなかった被験者は「自分の判断が正しいという確信があった」と言っています。

自分に自信がある人は同調圧力に屈しにくいと言えそうですね。

アッシュの同調実験を日本で行った結果

アメリカの研究者ロバート・フレイジャーが日本でアッシュとほぼ同様の実験を行ないました。

結果は、サクラに同調して誤答をした人の割合は25%でした。

アッシュの同調実験では32%の人が誤答しているので、日本のほうが誤答率が低いことになります。

実験前は、和を以て貴しと為す日本人は、同調して誤答率が高くなる考えられていましたが、実験によってそうではなかったことが明らかになりました。