同調とは?
この記事で解説している「同調」の意味は、
他に調子を合わせること。他人の意見・主張などに賛同すること。
になります。
同調して行動することを「同調行動」、同調するように圧力をかけることを「同調圧力」と言います。
人が同調する心理
「1+1」はいくつか?
答えは「2」です。
これは紛れもない事実です。
しかし、その場にいるみんなが「11」だと答えたらどう思いますか?
「きっとこの場では特殊なルールが定められているんだろう」と思って、自分も「11」と答えたくなるのではないでしょうか。
すなわち、自分以外の全員の意見が一致していると同調が起きやすくなります。
これが同調という心理です。
人はなぜ同調するのか?
「長いものには巻かれろ」ということわざがありますが、人は「みんなと一緒でありたい」と思う心理があります。
特に日本人は特にみんなと同じだと安心する気質を持っています。
みんなと同じであることで仲間外れにされることを避けることができます。
だから人は何かを判断するとき、周りの人に同調する傾向があります。
あるときは他人の意見に影響を受けて、自分の意見を変えることもあります。
ときには明らかに誤りであっても多数派に従うことがあります。
これが同調の悪い面ですが、同調にはみんなが同じ価値観であること、同じ行動を取ることで、社会的集団の秩序を守ることができるというプラスの面もあります。
同調行動の例
- ファッショなどの流行に乗る。
- ランチで周りの人と同じものを選ぶ。
- 会議などで全員一致の意見に反対できずに黙っていた。
- 仕事が終わっても自分一人だけ早く帰ることができなかった。
- サッカーをしたいけどみんなが家でゲームをやりたいと言ったからゲームをした。
同調には情報的影響と規範的影響がある
イギリスの社会学者ドイチとジェラードは、同調の原因として「情報的影響」と「規範的影響」の2つがあると考えています。
情報的影響
情報的影響とは、他者の判断を正しい情報だと考えて自分の考えに取り入れることです。
例えば、ある商品を購入する場合、ネット上の口コミを参考にして商品を選ぶことは、情報的影響の1つと言えます。
規範的影響
規範的影響とは「上司から嫌われたくない」とか「集団の輪を乱したくない」という心理から行う同調のことです。
例えば「本心では反対だけど、批判されることを恐れて多数派の従う」ことは、 規範的影響にあたります。
アッシュの同調実験の内容
この同調行動についてですが、アメリカの社会心理学者アッシュが1950年代に興味深い実験をしていたので紹介します。
その実験は、多数の人が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べるというもの。
アッシュの同調実験は次のようなものでした。
会議室に8人の被験者が集められましたが、この中の7人がサクラで真の被験者は1人だけです。
被験者の前に試験官が2つのカードを見せます。
被験者はカード1に描かれた線と同じ長さの線を、カード2に描かれた3本の線の中から選んでもらいます。
カード2に描かれた3本の線の長さはそれぞれ明確に異なっていて、普通は間違えようがない問題です。
最初に7人のサクラが順番に「A」という誤った回答をしたあとに真の被験者が答えます。
以上の手続きの実験をアッシュは12回行いました。
アッシュの同調実験の結果
7人のサクラが全員誤った回答した場合、被験者が同調して誤答した割合は32%になりました。
アッシュは、被験者を1人にして、同じ問題を出しました。
その実験では99%以上の人が正解でした。
1人のときは間違えない問題でも、 全員が誤った回答を選ぶと、被験者も流されることが明らかとなりました。
アッシュの同調実験で誤答をした人と一度も間違えなかった人の言い分
アッシュの同調実験で誤った回答をした被験者は次のように言っています。
「最初に回答した人は目が悪かったのだろう。みんなは最初に回答した人に配慮して誤った回答をしたのだろう。私もその場に合わせなければいけないと思いました。」
ここから同調圧力に屈しやすい人には、以下の特徴があることが分かります。
- 勝手に思い込んで勝手に解釈をしがち
- 空気を読む能力が高い、人一倍気を使っている
その一方で、アッシュの同調実験では25%の人は一度も間違えませんでした。
一度も間違えなかった被験者は「自分の判断が正しいという確信があった」と言っています。
自分に自信がある人は同調圧力に屈しにくいと言えそうですね。
アッシュの同調実験を日本で行った結果
アメリカの研究者ロバート・フレイジャーが日本でアッシュとほぼ同様の実験を行ないました。
結果は、サクラに同調して誤答をした人の割合は25%でした。
アッシュの同調実験では32%の人が誤答しているので、日本のほうが誤答率が低いことになります。
実験前は、和を以て貴しと為す日本人は、同調して誤答率が高くなる考えられていましたが、実験によってそうではなかったことが明らかになりました。